ダイビング高圧ガス安全協会
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アルミタンク法改正に至る背景
再検査基準作成と適用範囲/法令の改正施行


★アルミタンク再検査基準の作成

高圧ガス保安協会では、今回のアルミタンクの問題を契機にスクーバータンク再検査基準の全面的な見直しを行う事とし、高圧ガス保安協会内に「空気呼吸器用容器再検査基準改正専門委員会(再検査基準委員会)」を設置し、平成14年1月24日に第1回目の再検査基準委員会を開催した。

◎高圧ガス保安協会自主基準とは

 「高圧ガス保安協会」は、主務官庁を経済産業省資源エネルギー庁原子力安全・保安院保安課として、高圧ガス保安法(昭和26年6月7日 法律第204号)という法律に基づいて設立されている機関である。

昭和38年12月に設立され、その後昭和61年10月に特別の法律により設立される民間法人となったが、現在も高圧ガス保安法に基づいて設立された法人に変わりなく、経済産業省の高圧ガス行政に関わる多くの業務を行っている。

 高圧ガス保安法および関係法令では具体的に詳細な部分については定められていないため、高圧ガス保安協会の「自主基準」は経済産業省や各都道府県が高圧ガス行政を進める上での基盤となっており、日本国内における実質的な国家基準(ディファクトスタンダード)となっている。



★従前の容器再検査基準(KHK S 0004)について

 昭和58年に制定されたものであり、制定されてから今日までの間に関係法令の変更などがあり、また当時はスクーバ用として存在しなかった「アルミ合金製スクーバタンク」の出現など、従前の基準を変更する必要性に迫られていた。
 また一方、アルミタンク事故の問題からスクーバ用アルミタンクに限って年1回のネジ部の目視検査が義務づけられることになり、それに伴って検査の方法や詳細な部分の検査基準が必要となった。
 以上二つの理由から、「空気呼吸器用容器再検査基準改正専門委員会」ではスチールタンク再検査基準の改正と、アルミタンク再検査基準を新規に作成する事となった。



★新しい容器再検査基準(KHK S 0151-2002)の適用範囲

 再検査基準委員会の名称に「空気呼吸器用容器」とあるように、この基準はスクーバタンクだけでなく、陸上呼吸器にも適用する基準である。
 なぜなら一般産業用の高圧ガス容器と比較して、スクーバタンクは水中でのバランスを考慮して余裕肉厚を薄くしてあり、陸上呼吸器も人間が背負って動き回るために軽量化を図る必要性からこれもスクーバタンクと同様に余裕肉厚を薄くしてある。
 そのため、どちらも一般産業用容器とは異なる再検査基準が必要であった。また近年、陸上呼吸器の世界ではアルミ合金の外側にFRPなどを巻いた複合素材容器(コンポジット容器)が多く出回ってきているが、この複合素材容器については単一金属素材の陸上呼吸器用容器とは全く異なった再検査基準が必要であるため、この自主基準では「継目なし容器」の範囲に限定した。

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★再検査基準委員会での検討内容

再検査基準委員会では、下記の項目について検討を行った。

「検査設備等の基準」
「容器等再検査設備の点検及び容器の前処理」
「外観検査(外部検査)」
「外観検査(内部検査)」
「質量検査」
「耐圧試験」
「附属品再検査」
「容器等再検査合格後の措置」

◎「容器の前処理」と「外観検査(外部検査)」について

再検査基準委員会では再検査を実施する前のタンクの前処理とタンク外面の目視検査の項目について、かなりの議論があった。
 現在の法律では、再検査を行う前に外面の塗装をすべて剥がさなければならない事になっており、外面を見て明らかに腐食が発生していないものについても、はたして外面の塗装を剥がす必要があるかという点であった。
 まして現在のスチールタンクには外面に亜鉛のメタリコン処理が施されているものも多く、亜鉛のメタリコン処理のものは例え傷がついてスチール面が露出したとしても、亜鉛が錆びて無くなってしまうまでスチールに腐食が発生しないという特性を持っている。
 諸外国の再検査基準でも、明らかに腐食の発生が認められない場合は塗装を剥がさなくても良いとされており、今回の再検査基準作成にあたってこの部分を是正すべきではないかという意見と、塗装表面からは何ら腐食が発生していないと認められたタンクであっても、塗装を剥がしてスチール表面を検査した結果腐食を発見した事例などもあり、かなり白熱した議論があった。
 結果として、再検査基準委員会は高圧ガス保安協会の自主基準を作るための委員会であり、法改正を審議できる場ではないこと、現状の法律に沿わない内容を高圧ガス保安協会自主基準に盛り込むわけには行かないことなどから、この問題については法改正につながる別の場で議論して頂くこととなった。



★再検査基準におけるアルミタンクとスチールタンク

 腐食に関する基準を設けるのは、腐食によって肉厚が減少し強度不足を生じるためであり、安全のためにどこまでの腐食を可とするかについては、肉厚減少が全くない場合の破裂に対する強度がどの程度あるかが分からないと腐食に関する合否基準を作ることが出来ない。
 スチールタンクについては従前からこの検討がなされて腐食に関する再検査基準が作られていることから、再検査基準委員会ではアルミタンクの破裂に対する強度の検証を行った。その結果、アルミタンクの破裂に対する強度はスチールタンクよりも強いことが分かった。
 この結果、アルミタンクの腐食に関する再検査基準および耐圧試験の再検査基準をスチールタンクと同じ内容にする事が提案され、実務作業上も二つの異なる基準を使い分けることより、一つの基準によって運用したほうが間違えを起こさないことなどから、スチールタンクの基準と同じものとすることとなった。

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★高圧ガス保安法関係法令の改正施行

これまでの調査・研究・検討結果をふまえてをふまえて、平成14年6月10日に高圧ガス保安法に基づく「容器保安規則」及び「告示」の改正が公布され、即日施行となった。

 改正された部分はスクーバ用に使用されるアルミタンクのみに適用改正されるものである。なぜなら、法改正はアルミタンクそのものに問題が生じたことにより、その問題点を補填する事を目的としたものだからである。

 これまで述べてきたアルミタンク特有の問題点を簡略に整理すると以下のようになる。
  • ある時期に製造されたスクーバ用アルミタンクのバルブ取り付けねじ部の結晶粒が粗大化していた。

  • アルミタンク内部侵入した海水や水分によって腐食が発生し、その腐食が結晶粒が粗大化したバルブ取り付けネジ部において、応力腐食割れが発生し充てんを繰り返すごとにひび割れが進行した。

  • ひび割れは、割れが発生してから、2年以内に破裂に至る大きさまでは進行しない。
(注)ねじ部結晶粒の大きさはアルミタンクの製造年代が新しいものになるほど小さくなっていることが確認されている。このため近年製造されたスクーバ用アルミタンクではこのような問題は発生しないと考えられる。
しかし調査委員会では、いつの時期以降に製造されたアルミタンクならば物応力腐食割れを起こす危険がないのかを特定することは出来なかった。

改正公布された法律については
「アルミタンクについて」の項参照


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