ダイビング高圧ガス安全協会
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タンク流通段階   タンク日常の取扱い内部への水の浸入コンプレッサーの整備不良不適切な充てん
残圧の維持アルミの温度上昇急速充てん炎天下への放置内部乾燥時の温度


管理責任と日常の取扱い

 この項では、スチールタンクの年1回の内部目視検査と、法律に定められた年1回のアルミタンク特定再検査、5年ごとの耐圧検査(古いタンクは3年)以外の、日常行われるべき安全管理について紹介する。



★スクーバタンク流通段階での安全管理責任
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スクーバタンクに空気が充てんされ、ユーザー渡され、使用後に再び充てん所に戻ってくるまでの経路には、いくつかの種類があるが、どのような経路をたどってタンクが流通しようとも、この間に管理者が不在の状態が無いようにしなければならない。常に次の管理者に引き渡すまでは自分に管理責任があることを忘れてはならない。

 スクーバタンクだけが放置され、管理者不在の状態が無いように流通段階のチェックが必要である。

以下のいずれの流通経路でも、タンク所有者の元に戻ってくるまでの間、管理者不在の状態があってはならない。

  • 「充填所(タンク所有者)」→「ユーザー」→「充填所(タンク所有者)」

  • 「充填所(タンク所有者)」→「タンクレンタル業者」→「ユーザー」→「タンクレンタル業者」→「充填所(タンク所有者)」
(レンタル事業者がタンク所有者の場合もある。)

★スクーバタンク、日常の取扱


◎タンク内部には絶対に水分を侵入させないこと。
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アルミ、スチールを問わずスクーバタンクの内部に水分や塩分が侵入すると、タンク内部腐食の原因となる。アルミタンクは比較的腐食に強い材質であり、スチールタンクは内面にメッキが施されているが、タンク内部は高圧空気のため酸素分圧が高く、激しい腐食環境である。
 平成14年6月にスクーバ用アルミタンク関係の法改正施行されが、この法改正の原因となった、アルミタンクねじ部の「応力腐食割れ」も、内部に水分や塩分が侵入しなければさびが発生せず、問題は起こらなかった。スチールタンクは内部にメッキが施されているとはいうものの、相対的にアルミタンクよりもさびが発生しやすい。
 こうしたことから、アルミ、スチール共に内部に水分や塩分が侵入する事は大きな問題となる。タンク内部に水分や塩分(海水)が侵入する原因はおおよそ以下のようなことに起因している。
  • コンプレッサーの整備不良
  • 不適切な充てん作業
  • タンク残圧をゼロにしてしまうこと


◎「コンプレッサーの整備不良」

:主として「ドレンセパレーター(油水分離器)」と「空気清浄器」の整備不良が、潤滑油と水分を混じった空気をタンク内に充てんしてしまう原因となる。
コンプレッサー最終段後に取り付けられている(中間にも付いている機種も多い)「ドレンセパレーター」と「空気清浄器」は、メーカーのマニュアル通りに定期的に点検整備を行い、空気清浄器内の薬剤は必ずメーカー指定のものを使用するべきである。

 ドレンセパレーターと清浄器通った後の空気が油水混じりのものであれば、畜圧器(親ビン)の中にも油水混じりの空気が入り、油水分は親ビンの底に溜まる。親ビンの底に溜まったドレンは、油分と水分に分離し、水分は親ビンをさびさせることになる。
 コンプレッサーをいくら整備しても充てん空気に臭いがついていたりすることがあるが、こうした例の主な原因は親ビン内に多量に溜まったドレンが原因であると考えられる。

 ドレンセパレーターの効率を悪くする原因の一つに、ドレンセパレーターに入ってくる高圧空気の温度がある。高圧空気の温度が高いと油分や水分が分離しにくくなる。従ってコンプレッサーがオーバーヒート気味になると、ドレンセパレーターで十分に油水分離が出来ず、これもタンク内に水分を送り込んでしまう原因となる。
(コンプレッサーのオーバーヒートは、一酸化炭素ガス発生の原因にもなる。)


◎「不適切な充てん作業」
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スクーバタンクへの充てんが終了し、次のタンクに付け替えて充てんを開始するとき、急激にドレンセパレーター圧力が下がると、セパレーター内部のドレンを巻き上げて空気に混ざり、タンクにドレンが侵入してしまう原因となる。この現象を防ぐにはセパレータ内圧が急激に下がる前に、溜まっているドレンを抜いておくことが必要である。
機種によっては、この現象を防ぐために、セパレーター内圧が一定圧力以下にならないような構造になっているものもある。

 また、スクーバタンクに充てんホースを取り付ける前に、必ずタンク内圧を利用してバル口に溜まっている水分やゴミを吹き飛ばすようにするべきである。これはレギュレータを取り付ける前に、タンクバルブを一瞬開いてタンクバルブ内部の空気の通り道をきれいにするやり方と同じである。
 バルブのレギュレータ取り付け口から、内部のストップ弁までの間は、少量ではあるが海水などが溜まりやすい。少量とは言ってもそれが海水で、充てんのたびにタンク内に入ってしまえば、タンク内部をさびさせるには十分な量になる。


◎タンク残圧をゼロにしない。

 これは、初心者用ダイビングテキストにも必ず記載されている事で、今更言うまでもないが、タンク内圧がゼロになった状態でバルブを開くと、温度変化によっていとも簡単にタンクが空気などを吸い込む。この時、周囲に水分や塩分があればこれらがタンク内部に入っていってしまう。いつも最低10kgf/m2 は空気を残しておくべきである。これは必ずダイバーの方々にも守ってもらわなければならない。もし残圧をゼロにしてしまった場合には、念のためにバルブを取り外して内部を点検すべきである。

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◎アルミタンクの温度上昇

 スチールタンクと比較すると、アルミタンクは熱による影響を受けやすい。
容器検査所で不合格となったアルミタンクの中には、胴部に「ふくれ」が発生しているものがあった。これは熱による影響で「胴部のふくれ」が起きたものである。
 アルミニウム合金は融点が低く、100〜200℃程度の温度でもクリープ変形(持続荷重による変形)を起こす。従って、アルミタンクは特に高温にならないような注意が必要である。 アルミタンクが高温になる原因として以下のようなことがある。


「急速な空気充てん」
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 親ビンからの流し込み充てんでは、アルミタンク内の温度が急激に上昇する。中には手で触れないくらいの温度まで上昇する。こうした急速な空気充てんはアルミタンクの強度を極端に低下させることになる。
 スクーバ用アルミタンクメーカーである日本ラックスファー(株)の「スキューバボンベ目視検査ガイドブック」には、アルミタンクへの充てん速度について以下のように記載されている。

高速充てん
ラックスファーのアルミニウム高圧ボンベは、絶対に高速充てんしないで下さい。当社ではスキューバボンベの充てん速度を毎分20−40気圧で行うようにお勧めいたします。高速充てんとは、スキューバボンベを毎分69気圧以上で行う充てんのことです。


また、タンクを水槽に入れて充てんする方法は、タンクの温度上昇を避けるためにも有効な方法である。


「炎天下への放置」

真夏の直射日光がタンクにあたっているとタンク表面がかなりの高温になる。
長時間繰り返しの高温環境は、アルミタンクが変形する原因となる。
スクーバタンクに強い直射日光が直接当たる環境では、タンクの上にシートやダイビングスーツ等などをかけ、直射日光が当たらないように配慮すべきである。

この点については、ユーザーにも守ってもらうようにしなければならない。


「内部乾燥時の温度」

タンク内部点検をしたときに、内部に水分が侵入している場合がある。水か海水かか、あるいはそれらが混ざったものかはそれぞれ異なるが、こうした場合には内部をきれいな水や温水で洗浄し、その後内部を良く乾燥させなければならない。
通常、タンク内部に温風を送り込んで乾燥させるのだが、温風の温度は100℃を越えないよう注意が必要である。温度が100℃を越えるようなことがあると、クリープ変形の危険性が出てくる。

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